まさかのトップバッターでびっくりしました!
こんにちは!!このサークルで、主に作曲をする「MIDI研究会」のリーダーを12月までしていたMIS.W50代のCapchii(カプチー)です。まっしーって誰?
去年のカウントダウンアドカレで、こんな強気なタイトルのメイキング記事を書きました。偉い人に絶対怒られたり晒されたりするだろうなぁ...って思ってたのですが、なんとありがたいことに、一年たった今でもTwitterで拡散していただいてます!(ていうか、「かわいい曲 作り方」でGoogle検索すると、一番上に出てきます。)
そこで、完全に調子にのったCapchiiおじさんは、勇んで第二弾を書くことにしました!!今回のアドベントカレンダー(と冬コミ)に向けて一曲作ってみたので、それを解説していきたいと思います!
それではいってみよう。
0. 今回解説する曲
今回、こちらの曲のメイキングの解説をします!
いわゆるKawaii future bassってやつですね。ちなみに、Kawaii future bassを聞くのは好きなのですが、正直ちゃんとジャンルに沿って作れてるのか未だにわかりません…!!
【Kawaii Future Bassって何?って人向け】
海外を中心に一台ムーブメントになっているEDMの一ジャンル。クラブでの盛り上がりよりリスニングに特化している。なんと日本発祥。クリエイターも日本人が多い。最近のKawaii future bassだと、この曲がバズっていますね。僕はこんなすごい曲たぶん一生作れません。はい。
https://www.youtube.com/watch?v=3nlSDxvt6JU
1. どの部分から作る?
曲のどの部分から作る?っていう話はコンポーザーの間でも鉄板ネタです。おそらくサビ派とイントロ派の二大勢力があるのですが、最近僕は70%くらいの確率でイントロから作ってます。理由は
- サビから作ると、サビで完全燃焼してしまって他の部分が手抜きになってしまうかもしれない。
- イントロをちゃんと作らないと、サビまで聞いてもらえず本末転倒
…っていう感じです。というわけで特に具体的なアイデアもない時は、イントロから試行錯誤して作っていきます。
2. コードを打ち込む
昨今のいわゆるEDMはミニマル的な要素が大きく、同じコードパターンの繰り返しで一曲通してしまうことが多いです。僕も例外ではなく、一曲を同じコードのループで済ませてしまうことが多いです。もっといろいろなコード進行が書けるようになりたい!!
というわけで、この曲で一曲通して使うコードを打ち込みました。
前回の記事ですと、「セブンスを使ってオシャレにキめる」なんてことも書いてましたが、今回は至ってわかりやすい、キャッチーなメロディーで攻めていきます。そのため、コード(そもそもコードであるのか怪しい)は画像のように、1度と5度をシンプルに重ねて、ルートを動かしていく構成にしてみます。音はこんな感じになります。少しスカスカ感があったので、うっすらベースもレイヤーして鳴らしてます。
ちなみにこのファンファンした音はSylenth1で出しています。Sylenth1は登場からだいぶ経っているので、少し古臭い音が出るのですが、出音が素直であり軽い上に、使い方も一番熟知しているので、未だによく手が伸びます。エンベロープでアタックとディケイにローパスをかけると、こんなファンファンした音ができます。
3. イントロのドラム
ドラムはそれっぽく打ち込みます。Futurebass系は基本的に半テンが多いジャンルなので、ドラムも半分のBPMでノれることを意識して打ち込んでいきます。
鳴らしたものがこちら。
去年と同じく、無料の「Trisamples 808 Trapstep Pack」をここでも使っています。
3. アルペジオ
アルペジオはこんな感じに、1度と5度を行ったり来たりする構成にします。
このアルペジオは一曲を通して鳴らしていくのですが、曲のステレオ感を強調するために、パンをオートメーションで左右に振ります。これだけで曲のステレオ感がだいぶ強調され、左右の空間が広くなります。あとはパンを振らずに、去年紹介した無料のオルゴール音源「Victorian Music Box」をならします。こんな感じになります。
ちなみにアルペジオはSpireというシンセで鳴らしています。最近導入したので練習がてら使っていますが、ほかのシンセでもいいと思います。
4. イントロのリード
リードは曲の顔となる大事な部分です。特にボーカルのない、インストの曲では殊更重要です。音色選びとメロディー組は慎重にやりましょう…といっても最近は手癖まみれで手垢まみれになったようなメロディーしか書けないのが悩みです。
Sylenth1でSine波をもとに音を作りました。ディケイの部分で鋭くピッチを上げると、カチカチした音になるのでよく使っています。また、こういったかわいい系のジャンルはMIDIの打ち込みも重要になってきます。ポイントは図の赤マルで示した「超短い音符をつける」ことと、青マルで示した「あえて16分音符で打ち込んでタメを作る」というポイントがあります。
さて、こんな感じで8小節分打ち込んだものを聞くとこんな感じです。
ここで、Fruity Stereo ShaperというFLStudio付属のエフェクトを使い、適当なプリセットを選ぶと、単純なサイン波の音が大きく左右に広がります。是非両方聞き比べてみてください。
また、このメロディーをイントロずっと繰り返すだけでは、聞いてる方が飽きてしまいますので、もう一つリードを増やし、メロディーを考えます。
ここでは「Awesome Piano」というコンプの強くかかった、アタック感の強いピアノ音源を使います。基本的にアタックの強調された音を使うと、音源全体の切れが良くなります。ここでも、「超短い音符をつける」ことと、「あえて16分音符で打ち込んでタメを作る」ことに気を付けて打ち込んでいきます。
こんなかんじのメロディーになります。
5.縁の下の力持ち
適当にCymaticsとかで拾ってきたパーカッションのループを張り付けて一曲通して鳴らします。ただ鳴らすだけでなく、ギリギリ聞こえるか聞こえないかくらいのできるだけ「小さい」音量で鳴らします。
最初に上のデモ曲を聴いたときに、このループがなっていることに気づいた方はほとんどいないと思います。ですが、これを鳴らすのと鳴らさないのとでは、音源全体のグルーヴ感やノリ、キレが大きく変わってきます。まさしく「縁の下の力持ち」ですね
6. イントロからドロップへ(ビルドアップ)
通常のEDMの曲ですとイントロがあってブレイク、ビルドアップしてからドロップという流れが一般的ですが、Futurebass系だとイントロでいきなりビルドアップしてドロップする曲がほとんどです。おそらくDJユースというよりは「聞くEDM」として台頭してきた背景があるからでしょう。というわけでこの曲もいきなりイントロでビルドアップ、ドロップします。
というわけで、「Trisamples 808 Trapstep Pack」のSnareとクラップを使い、まずはビルドアップっぽいドラムパターンを組んでいきます。あとはサンプルを組み合わせてこんな感じに作ります。
7. いよいよドロップへ
ドロップといえばEDMのサビであり、曲の顔となる部分です。つまり、曲のドロップの部分でこの曲の評価が決まることになるので、慎重に作っていきます。
まずドラムを打ち込みます。イントロと同様に半テンを意識して、タメの部分なんかも作りながら構成していきます。ここで、イントロの部分でも鳴らしたパーカッション素材も忘れずに一緒に鳴らすようにしましょう。
ちなみに今回リズム隊に使用しているサンプルは、すべて無料で配布しているものです。キックとスネア、ループはCymatics, そのほかはTrisamplesのサンプルパックです。
リズム隊だけで鳴らすとこんな感じになります。
8. ドロップのキモとなるコード
Futurebassの肝といえば、リードと並んでこのコードを鳴らすPADにあります。Saw系の音を使うことが多いですが、鳴らし方にもクリエイターによって並々ならぬこだわりがあると思います。
Serumというシンセで音を作り、コードを鳴らします。SerumはEDMクリエイターの中で今一番使われているシンセといっても過言ではなく、唯一無二で迫力のあるとても良い音が鳴ります。Saw系のオッシレーターを駆使して、Supersawっぽい音を作ったのちにMIDIでコードを打ち込んでいきます。ドラムのビートを意識しながら打ち込むのがコツです。
また、途中で16分音符刻みに「バババッ」となるのは、ゲートエフェクトでなく、MIDIの打ち込みで表現しています。ここまででこんな感じの音になります。
このままですとノリがいまいち足りないので、Tapestopというエフェクトをかけます。Tapestopは文字通り、テープを止めた時のように、音が低くなって音が止まるという現象を再現できるエフェクトになります。
今回、無料の「dblue tapestop」を使います。オートメーションクリップをコピペしながら、スネアが鳴る手前でテープストップをかけるイメージで作っていきます。ベース系の音色もサイドチェインをかけつつ重ねながら、ドラムと一緒に鳴らすとこんな感じになります。ベースにもテープストップをかけるのを忘れずに!
9. アルペジオは派手に
イントロでもアルペジオをならしましたが、サビではイントロと同じく空間を広げるのと同様に、音源にキレを出すという効果もあります。サビではアルペジオの音色をもう一種類増やして、よりオケ全体のキレ感を上げていきます。こちらもパンをオートメーションで振っていきます
イントロのアルペジオと聞き比べていただければわかると思いますが、シンセの音色をもう一種類増やしたことで、より音の粒感が増していると思います。ここまで説明した全部の楽器を鳴らすとこんな感じです。
…「ヘイッ」ってやつを説明してなかったですね。Trisamplesのサンプルに入っている野太い「ヘイ」のピッチを上げて作っています。
10. リードにこだわる
いよいよここまでくると大詰めです。曲の顔であるサビのメロディーを書いていきます。
画像の上から順に「Serumで作ったシンセリード(黄)→Awesome Pianoで打ち込んだリード(紫)→Sine波のリード(灰)→シロフォン(青)→追いかける感じのリード(緑)」です。このうち、Sine波のリードはサビの後半のみでなっていますが、イントロの使いまわしなので省略します。
まず、Serumにて音を作った後、フレーズを打ち込んでいきます。ここでも、「超短い音符をつける」ことと、「あえて16分音符で打ち込んでタメを作る」ことに気を付けて打ち込んでいきます。
こんな感じの音になります。(後半違うフレーズになってます...)
次に、これをまるまるコピーして、Awesome Pianoで同じフレーズを鳴らしてレイヤーします。重ねるとこんな感じです。パリッとしたキレのある音になったと思います。
ここで、高音域のアタック感を増すために、シロフォンの音色をさらにレイヤーします。シロフォンは高音域が多く、なおかつアタック感の強い音をしているのでよく使います。
「Serum+ピアノ+シロフォン」全部重ねるとこんな感じです。
次に、このリードを追いかける感じで別のフレーズを鳴らすリードを作ります。音はSylenth1で、こちらはディケイのピッチを鋭く上げることでアタック感を出していきます。
あくまでメインのリードの引き立て役みたいな感じで打ち込むので、わりとスカスカな感じで打ち込みます。リードを全部鳴らすとこんな感じです。
ここまででサビまでの一ループが完成します!お疲れさまでした。
11. 終わりに
今回、無料のサンプルパックを積極的に活用して音を作りました。その割には、なかなかの曲が作れたんじゃないかなぁ~と思ってます。よかったら第一弾の方もチェックしてください!
12. 使ったものまとめ
- FLStudio12(有料)…DAWです。
- Sylenth1(有料)…出音が素直で素直で軽いソフトシンセです。ちょっと古い。
- Serum(有料)…最近の定番ソフトシンセです。これ一台持っておけば間違いない
- Spire(有料)…最近導入しました。繊細かつ大胆な音を併せ持ったシンセです。アルペジオに使ってます。
- KONTAKT5(有料)…これ単体で買うならKOMPLETE買う方がいいと思います。サンプラー。
- Awesome Piano(無料)…アタック感の強いピアノ。よくリリース切って使ってます。(配布元死んでたので二次配布しかなさそう)
- Victorian Music Box(無料)…いい音のオルゴール音源。KONTAKT上で動作します。
- Trisamples 808 trapstep pack Vol.1, Vol.2(無料)…去年から引き続き使ってます。これ一つあればTrap系何でも作れる気がする。
- Cymatics Apashe Copter Boy Sample Pack(無料)…スネアとキックに使ってます。Cymatics系はフリーでいいサンプルが多いけど、使ってる人もそれなりに多いので注意。
- Cymatics Perc Loops Vol 1(無料)…パーカッションのループ素材。なかなかいい素材だと思います。
あとはオマケでこの曲全部のMidiファイルを置いておきます。
ここまで読んでくださった方!ありがとうございましたm(__)m明日はクランク先輩の記事です!!