皆様お久しぶりです!初めましての方は初めまして!MIDI研会長のYokoheiです。私たち経営情報学会(MIS.W)は、本日3月30日から4月16日までの間、異なる会員が「自分の得意分野に関する技術的なお話」や「個人の好きな話題」について、各々の言葉でつづっていきます。どうぞ最後までご覧ください!
手始めに私は、「メロディにコードを付けるための方針(中級者向け)」についてお話しします。
メロディが浮かんだのに、それに最適なコードを組み立てるにはどうすればいいか迷うことがあります(筆者自身も相当迷います)。
結論から言いますと、当然ですが答えはありません。ただ、メロディになじむコードは今のところ限られています。解決策を探るための準備として、お手数ですが、私の経験などを交えた少し話を根本的な方向に戻します。
音楽の三要素と言えば、「メロディ(旋律)」「コード(和音)」「リズム(拍子)」が挙げられます。今回は特にコードについて。 既に中世以降のクラシック音楽の時代からコード進行というものは定型化が始まっていて、最適化が行われてきました。ここでいう最適化とは、「簡単かつ最も効果的に感情を伝える」ことです。これが最近の「王道進行」と呼ばれるものです。
例えば「クリシェ進行」というものがあります。簡単に言うと「コード構成音の特定の一音だけが上下に動く進行」です。筆者は東方Projectの曲が好きなので東方の曲を例に挙げると、東方星蓮船のExボスBGM「平安のエイリアン」は、
①イントロ ②途中の静かなエレピ
に、クリシェ進行が入っています。もうちょい頑張って分析してみると、①は「上下に動いて不協和音が鳴り少し不安になって」、②はコードが下がっていって「何か途方に暮れてやるせない気持ちになる」といった感じです。具体的には、
①Dsus4/D→Dsus4/D#→Dsus4/E→Dsus4/D#(分母はベース) ②Bm→A→C#m→G→A
(いずれもベースラインがクリシェ)です。 このように、王道進行ひとつでも使い方次第では全然異なる印象を与えることが可能です。
自身がよく使うコード進行の一つに、
Ⅳ→Ⅴ→Ⅵm
があります。東方好きがバレるやつです。しかしながら、いずれのコードにも言えるのですが、むやみやたらに好きで使ってるわけではなく、これは何か感情的に訴えるような強い意味を持つ進行であると感じ、これが「何か気分を上向きにさせるために効果的である」として意図的に使っています。 また、他には、
Ⅵm→Ⅵ#maj7→Ⅵm
という謎の進行があります。「何か起こるかもしれない」といった不安を煽る印象が強いです。 このように、私はそのコード進行に込められた意味をくみ取りながら、作曲する際に取り入れていきます。
さて、今の話を踏まえて、「メロディにコードを付ける方針」を考えてみましょう。暇があれば打ち込んでみてください。BPMは120です。
こちらに深夜テンションで作成したメロディがあります。
まずこれを作って私が何を思ったかを2つ挙げます。
・このメロディはCが基調となっていて、主張が強く何となく明るい ・Cメジャースケール(#や♭が無いやつ)でメロディが作られている
このメロディから読める情報はこれだけで充分です。Cメジャースケールから、ダイアトニックコード(Ⅰ~Ⅶ)を構成できます。コードのCはダイアトニックコードのⅠにあたります。
①何となく明るいので、「Ⅰで終わる」コード進行を考えてみます。
見てください、なんとⅠで終わってません。ふざけるな…と言われそうですが、ここでは「Ⅰ7」というセブンスコードを使ってⅣへの強進行を導いています。ループして聴いていただくと、そんな違和感は無いと思います。(Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm→Ⅵm→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅰ7)
②次に、「Ⅰで始まる」コード進行を考えてみます。
噂をすればクリシェ進行です。独特の力の抜けた雰囲気に変わりました。(Ⅰ→Ⅲm→Ⅲm(♭5)→Ⅳ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅰ→Ⅴ)
ところで、Ⅰのルート音はⅣとⅥmの構成音に含まれています。①では最初にⅣを用いましたが、この事実を踏まえてのことです。 ということは、Ⅵmを最初に使っても調和するはずなんです。すこしメロディをいじってこんな感じにしてみます。
ガラッと雰囲気が変わりました。なんか感覚的にカッコよさが増えたと言いますか。(Ⅵm→Ⅴ→Ⅳ→Ⅴ)
こんな感じで、似た(あるいは同一の)メロディだけでも複数のコード進行の選択肢があります。しかし、メロディでもコードでもリズムでもそうなのですが、重要なのは「それで何を伝えたいのか」です。ハッピーな感じにしたいのにⅥmから始めても、共感してくれる人は少ないと思います。
まとめると、私がメロディを何よりも先に作った場合、それにつけるコードを組み立てる方針は ・コード進行がもつ意味を理解しておく ・メロディで何を伝えたいかを念頭に置く ・メロディがどのスケールにいるかを把握する ・伝えたい意図をもつ進行をスケールに合わせて当てはめてみる
です。ぜひ参考にしてみてください。
…と言ってすぐ実践できる人がいたら多分音楽で食っていけると思います。いきなり「コード進行の持つ意味を理解しておく」でつまづくと思います(つまづいてくださいお願いします)。
少し脱線しますが、私はネットではCrawkという名前でゲーム・アニメ曲のオーケストラアレンジを作っています。かなり原曲に近い雰囲気を残したままのアレンジになっていますが、それを可能にしている要素のひとつは、「原曲と同じコード進行であること」です。頑張って聴き取って、それを管弦楽の楽器に当てはめるという事だけを行っています。つまるところ根底にあるのは耳コピです。
様々なサイトや本を読みましたが、結局のところコード進行は、どの本よりも楽曲自身の方がむしろ正確に、かつ綺麗に書かれていると思います。当然この記事よりも遥かに正しいことを言ってます。既存の楽曲のコード進行は、ある種の完成されたプログラムのソースコードと思っても差し支えないです。自分の知らないアルゴリズム(コード進行)があった場合、それを分析(耳コピ)して自分のものにする。作るときは、目的に合ったアルゴリズムを選択し、ある程度目処を付けつつも少々手探りで書き込み、エラーがあれば何がいけないのかを分析して解決する。そんなイメージです。
「このメロディにはこういうコードが良いんだ」という感覚を耳コピを通じて養っていくのもひとつの練習法であると思います。まずは焦らずいろんな曲を聴いて(欲を言えば、耳コピしてピアノロールに打ち込んで)みてください。どれだけパターンを吸収しても無くなることはないと思います。
コード進行の例を言えば十数パターン以上×12音階分×それらの組み合わせ…ときりがないので、本日はこのあたりで締めくくらせていただきます。最後まで読んでいただきありがとうございました!