どうも,CoD暴言の人です
ごめんなさい真面目にやります.先日晴れて(?)会計兼動画班班長となってしまった54代のみゅーです.Twitter見てる方には「イルカ」の人といった方がいいですかね?まだ2徹の疲れが取れてないようで変なことを口走るかもしれません.
何について書くんですか?
正直書くことが全く決まってなくて,これも一日前くらいに書き始めてます.せっかく動画班班長という肩書きをもらったので,今回は映像の話をしようかな…と思います.
今から書く内容はあくまで僕個人の意見であり,必ずしも正しいとは限りません.僕は専門的に映像を学んでいたというわけでもなく,雑に5年近くやってきた経験から生まれた思考なので8割嘘な可能性もあります.それだけは頭に留めといてください.
「動き」について
「動画」という名前そのまんまですが,これは「画が動く」ものですね.今回はこの「動き」について僕の持ってる考えを話そうと思います.あと,僕は生粋の理系人間なので,こういう話の各所でも理系っぽい観点を持ってしまっています.ご了承ください.
まずは基本から
まずは下の二つの動画を見比べてみてください.
どちらも三角形が同じ位置に移動していますが,動き方が違います.だいたいの方が,左側の動きを「気持ちいい」というように感じるかと思います.この2つにどんな違いがあるのか,見ての通りですが「速さ」ですね.実際どのような速さで動いているのか,速度グラフ*1を見てみましょう.
グラフで見ると違いは明らかですね.左はだんだんと加速していき,最高点まで達したら減速していって止まる動きをしていますが,右は等速運動をして急に止まります.
なぜ左の方が「気持ちいい」と感じるのか
理由は単純で,現実にある動きに「近い」か「異なる」かです.
現実にある物体は物理法則に従って動きます.速度のある物体はエネルギーを持っているので,衝突や分裂でもしない限り突然止まるなどということはできません.何かしらの力を加え,減速していくことで停止させることができます.動き出すときはその逆で,何もエネルギーを持っていないので,何らかの力を加えて加速していくことになります.これを疑似的に再現しているのが左側です.右の突然始まって突然終わる等速運動なんて現実には存在しませんね.
つまり,我々は現実にあり得る動きに近いものを「気持ちいい」と感じるんです.
ここで一つ問題です.「それでも俺は動きを急に止めたいんだ!」というとき,現実ではどのような動きになるでしょうか.車両の急ブレーキなどを思い浮かべてみましょう.
ここで「慣性の法則」が働きますね.急に止まろうとすると,進行方向に少し引っ張られるアレです.物理を語る記事ではないのでどのような仕組みかまでは省きます.では等速運動にこの慣性を取り入れてみるとどのようになるでしょうか.
少し速い動きにはしていますが,さっきの右側より明らかにいい感じになりますね.これは「バウンス」と呼ばれていたりします.
は?物理法則でこんな動きしねぇだろ?
と,ある程度物理をやっている人間ならば思うでしょう.その通りです.誰も物理法則を厳密に再現してるなんて言っていません.
ここまでやっていることは,あくまで現実にあり得る動きに「似せたもの」を取り入れているだけです.言いたかったことは,少し「現実を意識した動き」を取り入れることで見栄えが格段に良くなる,ということでした.
このように一連の動きに変化をつけることを「イージング」と呼んでいたりします.細かいやり方等に関しては,前動画班班長のはしどいさんがまとめている記事があるのでそちらを参考にしてください.ここではあくまで僕の「考え方」の話なので.
ここまでをまとめると…
繰り返しですが,僕が「動き」をつける際にまず基本として考えているのは,
です.それは厳密な再現である必要はなく,あくまでイメージとしてです.強調するもよし,弱めるもよし.
そしてこれは色々な場面で適用することもできます.ここでは「位置」を動かしている例を挙げていますが,「大きさ」が変わる動きに適用してもよし,「形状」が変わる動きに適用してもよし… 本当にすべての「動き」に対する基本だと僕は考えています.
いろいろな映像作品を見て目を肥やしていくと,だんだんといい動きとよくない動きの見分けが付くようになってくると思います.そうしたら自分でいろいろと手を加えて,自分なりの「気持ちいい動き」を作ってみるのもいいですね.
大前提の話を踏まえて…
ここからは,先ほどの基本を踏まえたうえで,僕が「動き」に対して意識していることを話します.先日の引退式の動画を例として使っていきます.まずは冒頭のロゴイントロの場面です.
(なぜかHatenaドライブにあげれなかったからgithubを使う暴挙に出た)
このシーンには大きく分けて2種類の動きがあります.
- ロゴや文字が出現する動き
- 画面全体が遠ざかっていく動き
ここから遠ざかっていく動きを取り除いてみましょう.こうなります.
パッと見ではわからないかもしれませんが,比べてみると少し臨場感のようなものが欠けた感じになるかと思います.このように,パーツ一つ一つの動きだけでなく画面全体の動きによっても見栄えが変わってきます.
ただし,この画面の動きもただつければよいというものでもありません.あまりよくない例として,別のシーンを挙げます.
先ほどの画面が遠ざかるのに加えて回転が少し入った場面なのですが,動きが不自然に止まってしまっていますね.細かいことを気にしなければこのままでも良いかと思いますが,個人的にはあまり好かないです.少し値グラフ*2を見てみましょう.
これは画面が遠ざかっているように見せている,「スケール」というパラメータのグラフです.一見自然に止まっているかのように見えます.止まる直前を拡大してみましょう.
こうすることで,止まるところのキーフレームで傾きが急に変わっているのが分かりますね.これが違和感の原因です.こんな細かいことも,大きな違和感の原因だったりします.
結局何が言いたい?
これ,割といろいろなところで感じるんですよね.世に出回っている動画で違和感を覚えるのって,大半の原因がこれだったりします.ほかの細かいパーツの動きに意識がいってしまうのもわかるんですが,いくらディテールが凄くても,止めてしまうせいで残念に見えてしまうことがあります.暴論ですが,途中で止めてしまうくらいなら,初めからつけない方がいいです.
MVとかでよくあるのが,歌詞が出現する動きを止めてしまって違和感を覚えるやつです.(僕が勝手に思ってるだけで,皆さんは思わないかもしれないですが…) まずこの動画を見てください.
例として出すには雑すぎるんですが,こんな感じでテキストが出てくる場面があるとします.この動画だとどちらのテキストもシーンが終わる前に動きが止まってしまっていますね.この動きを少し変えてみましょう.
わずかな違いですが,こちらは両方のテキストアニメーションが最終フレームまで続いています.これだけで見栄えが変わりましたね.(ここで言うのも難ですが,ボカロ企画に出された動画にもこの辺りを直すだけで各段に見栄えが変わるものがありました)
動きの違いはわずか数pixel/sec程度でしかないのですが,見栄えは明らかに変わります.逆に言えば,ほんのちょっと変えるだけで格段に良い見栄えのものに早変わりするわけです.この違いに気づけるかどうか…ということですね.
とはいっても,動きを止める部分は存在します.僕もこんなことを言いつつ,すべて動かし続けているわけではありません.
じゃあどうすれば?
そのようなときは,「他の動きに見る人の焦点を変えさせる」ことが重要だと考えています.先ほどよくない例として挙げたものも,違和感がそこまで大きくないのは別の動きに焦点が移りつつあるからだと考えます(あと誤魔化しのためにエフェクトを加えてたりします).今この場面ではどのパーツに焦点が当たるのか,どの動きがメインなのかを考えながら作っていくといいかもしれません.
これは僕が今年のボカロ企画で制作したものですが,普段以上に「動きを止めない」ことを意識して作ったので,一度見た方ももう一度見てみてください.ほとんどのシーンにおいても何かしらの動きが存在しているはずです(特に背景).
「動き」って難しいですね
ここで書いたことはあくまで僕が考える良い「動き」です.「違くない?」と思われる方もいると思います.これはあくまで「僕ならこうしますよ」的な意見程度に思ってもらえればいいです.
実際のところ,「動き」に正解はないと思っています.その映像の雰囲気,用途など諸々の条件によって何が最適かは違うはずです.ここでは止まることをいかにも悪いかのように書いてしまっていますが,演出として敢えて用いる場合だってあります.結局その場面で自分が何を見せたいかっていうのが一番重要ですね.
「違和感」という言葉も多用しましたが,「違和感」を覚えるようになるまでがなかなか大変な道のりです(むしろ初めから違和感を持っている方はセンス◎なので今すぐに動画を作ってください).今でこそ自分が過去に作ったものに「下手だなぁ…」と感じることができますが,作った当初は完璧な自信があったと思います笑.これについては近道はないと思っているので,様々な映像を地道にインプットしていって目を肥やしていけばいいと思います.自分の作ったものに違和感があるかほかの人に聞いてみるのもいいでしょう.自分以外が見てどう感じるかはとても重要です(僕はこういうことをあまりしてこなかった人間なので,欠点を見つけるのに人より時間がかかってしまいます).
最後に
ここまで終始上から目線のような感じで話してしまいました.不快に思われた方には申し訳ありません.僕自身この道のプロではないのでこんな偉そうに言える立場ではないかもしれませんが,普段からこのような考えを持ってやっているということを知ってもらいたかったので書きました.
何か映像を作りたいって人は,大抵「こんな表現をしたい」とかのイメージがあって,そのイメージを表現するにはどんな技術がいるのか,というようにして引き出しを増やしていくと思います.しかし僕はその逆の人間で,「こういうことができるからこのような表現にしよう」というように持っている引き出しを雑に開けていって選び取っていくスタイルなんです.こうなってしまった理由はわかりませんが,僕が制作スピードが遅い一因はここにあるかと思います.作りたいイメージをたくさん持っている人に,僕のこの変わった(?)スタイルを知ってもらいたかったのもこれを書いた理由の一つです.
以上,長くなってしまいましたが映像の「動き」についての記事でした.今映像を作っている人,これから作ろうとしている人の参考になれば幸いです.最後に僕が個人的に刺さった映像の一つを紹介して締めたいと思います.この方はもともと僕と同じくMontage制作をやっていた方ですが,その時から群を抜いて上手かった方です.(何気に認知されているのでちょっと嬉しかったりする)
明日は新MIDI研会長のタニシ君の記事です.